感想 (56) 私たちが星座を盗んだ理由2016年09月11日

これまで読んだ本の感想 (その 56)。

「おすすめ」で紹介された。
タイトルが気になったので読んでみることにした。

o 私たちが星座を盗んだ理由 - 北山猛邦

5 編のエピソードが収録されている。
ジュブナイル、ファンタジー、ピカレスク、ロマンス、タイトルから期待させる通り、ほんわかした雰囲気から始まるストーリーだが、最後で一変する。
ぞっとするような感じだったり、悲しかったり、いずれも残酷な結末になっていて、切ない。
このシリーズの特徴かもしれないが、それにしても後味が悪過ぎる。

感想 (55) 十三番目の人格 ISOLA2016年07月18日

これまで読んだ本の感想 (その 55)。

ホラーは読まないつもりだったのだが、以前読んだ 浦賀和宏 から関連する作品を探していて気になったので読んでみることにした。

o 十三番目の人格 ISOLA - 貴志祐介

タイトルからして多重人格の話だろうと想像できた。
そこにエンパス (人の心が読める能力) が絡んだストーリーが面白い。
途中までは、心理学の世界が描かれていて、それだけでも十分に楽しめた。
いわゆるホラーにありがちな残酷な表現がなかったせいか、あまり怖くはなかったが、不気味な感じはした。
幽体離脱が出てくるあたりから、さすがにホラーに分類されていると納得したが、普通に SF でもいい。
後半の展開や結末は予想できたので、拍子抜けした感じがした。
結末は、何とも後味が悪い。

感想 (54) 占星術殺人事件2016年06月12日

これまで読んだ本の感想 (その 54)。

前回はちょっと変わったミステリーだったので、本格的なミステリー・サスペンスに挑戦。

o 占星術殺人事件 - 島田荘司

43 年前の迷宮入り事件の謎を解くといっても、1979 年の話なので、戦前に発生した事件だ。
それまで誰も解決できなくて議論になっている、芸術家とその娘たち 6 人が殺された占星術殺人事件に 占星術師 御手洗 潔 が挑む。
最初に殺された芸術家の手記があり、さらに 御手洗 と友人の 石岡 の会話によって、事件の全貌が明らかにされる。
京都での調査、解決編、複雑に思えた謎が、いとも簡単に解決されてしまうことに驚かされた。
あとで調べたら、有名なトリックのようだが、エンタメ推理にどっぷりと浸かってしまった者にとって、本格推理がどれほどのものか思い知らされることになった。
実におもしろかった。
御手洗 潔 を追いかけてみたいと思う。

感想 (53) キマイラの新しい城2016年05月08日

これまで読んだ本の感想 (その 53)。

「おすすめ」で紹介され、そのタイトルと表紙に惹かれて読んでみることにした。

o キマイラの新しい城 - 殊能将之

ミステリー・サスペンスのカテゴリに分類されているが、内容紹介で「750年前の死の真相を探れ」などとなって、普通のミステリーでないことは想像できたが、これまで読んだことがない内容だった。
フランスの古城を移築したテーマパークの社長が、その城主の亡霊にとり憑かれた。
社長の部下に呼ばれた探偵は、その犯人を突き止め、事件の真相を探れと依頼される。
無理やりな推理は軽いし、亡霊 (中世の騎士) が見た現在の風景 (六本木ヒルズ) の描写が笑える。
社長の言動、コスプレによる事件の再現、六本木ヒルズでの大立ち回りなど、何とも奇抜でとてもおもしろかった。
一般的なミステリーやサスペンスのように謎や推理を楽しむのではなく、ばかばかしさが楽しめるエンタテインメントだった。

感想 (52) 山の上の交響楽2016年03月27日

これまで読んだ本の感想 (その 52)。

再び SF、短編集。

o 山の上の交響楽 - 中井紀夫

SF というカテゴリに分類されているが、少しだけ変わった普通の生活 (日常) を描いた物語が集められている。
演奏に一万年かかるという交響楽を演奏している楽団の話 (表題作) だったり、電線の上に住む人々とその生活が描かれたり、なんとも不思議だが、心が温まる。
特に、渦巻き状の世界に住んでいて、その世界の果てまで歩いて行こうとする男の物語「見果てぬ夢」が良かった。